2006年10月 4日
| インセンティブ制度
| ひる |
| 日本で携帯電話を買うと安い。 ミドルレンジの旧型(と言っても半年ほど前に出たばかり)なら新規契約で1円もザラだ。
ところが海外ではミドルレンジと言えども3〜4万、ハイエンド機種なら7〜10万円は出さねばならない。 これは日本の携帯キャリアが、ユーザーに代わってメーカーにインセンティブを払っているからなのだ。 本来なら7万円する端末に対し、4万円のインセンティブをキャリアが払うことで、ユーザーは3万円で新機種が買える。 その代わり、キャリアはユーザーに対して海外に比べ高額な通話料やパケット代を払わせて、その分を補っているのだ。
ユーザーから見たインセンティブ制度のメリットとしては、新規導入や機種変更時のコストが安くつくことが上げられる。 逆にデメリットとしては、ランニングコストが高いことと、契約期間の縛りが多いことだ。
がしかし、キャリアの見通しが甘かったのか、期間の縛りなしでもそれほど高コストになっていないために、 超短期で機種変更を繰り返したり、新規購入後すぐに解約したりという手段を阻むことが出来ず、 インセンティブの回収が追いつかずに赤字になるケースが多々見受けられるわけだ。
今回、ソフトバンクが取った戦略は、旧来型のコスト回収手法を踏襲しつつも、インセンティブ制度の廃止を目論んだ画期的な手法と言える。 2年縛りの割引サービス「ハッピーボーナス」に代わる、「スーパーボーナス」のことだ。 ハッピーボーナスはただ単に、どのキャリアにもある継続割引サービスである。 契約期間が長ければ長いほど基本料金が割り引かれ、且つ1年ごとに2ヶ月間の無料月がある。 また新規時、機種変更時の端末価格も加入者は割り引かれる。
一方スーパーボーナスはまるで違う。 継続割引サービスももちろんあるが、それが主体ではない。 ユーザーに分かりにくくしてはあるが、これはインセンティブ制度のリスクをユーザーに負わせようという巧妙な手法なのだ。
スーパーボーナスでも、本来7万円の端末が3万円で買えるのは、従来どおりだ。 が、最初に払うこの3万円は、実は端末の「頭金」なのだ。 残りの4万円は自動的に24回の割賦払いとして毎月の料金に加算される。 とは言え、このままではユーザーに二重の負担を強いることになるため、割賦分は「特別割引」としてそのほとんどが差し引かれ、ユーザーの負担は現状のままだ。
ただし、2年間同じ端末を使いつづければ、の話。
途中解約したり、機種変更したりすると、「特別割引」がなくなるため、以後の割賦分を払いつづけなければならない。 フツーに考えれば、これでも特に問題はない気はする。 しかし、ソフトバンクは水没や落下などの事故による故障も、アフターケアなしに機種変更と同様にすることにしてしまった。
また、せっかく画期的な手法を考えついたのに、それをスムーズに導入する手段を間違えてしまったようだ。 加入月からいきなり2ヶ月間無料!とか端末購入時に1万円引き!など目先のメリットは強調しているが、 割引率の低下や以後の無料月がないことなど、既存のサービスに劣る上に2年以内の機種変更時の負担が大きい。 しかもそこへ来て、元々別サービスと銘打っていたハッピーボーナスを廃止にすると言い出した。 つまり、スーパーボーナスへ乗換を強制したようなもので、ユーザーのメリットが見えないサービスへの強制加入は反発を招くことが容易に想像できる。
はっきり言ってオレ的に考えれば、インセンティブ制度自体を完全に廃止すべきと思う。 端末の価格は高いが、ランニングコストは安くつく。それでいいじゃないか。 インセンティブなんてものがあるから、SIMロックという悪しき管理制度まで出来た。 SIMロックさえなければ、複数のキャリアと契約しても端末は1つで済む。
もちろん、インセンティブのおかげで高機能な端末が安く買えたため、日本の携帯はこれほどまでに高機能化が進んだとも言えるだろう。 世界的に見ると、端末もサービスも、日本の携帯は相当特殊なのだ。 インセンティブを長く引きずり過ぎたとは思うが、確かにそろそろ考え方を変えるべきじゃないかな、日本のキャリアは。
ただし、ソフトバンクみたいなやりかたじゃなく。 | | | |
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